日本政府は6月5、6日にモンゴル首都ウランバートル
で開かれる国際会議の場を利用して、北朝鮮の外交当局者
と接触を図る方針を固めた。安部総理は、日朝首脳会談に
向けてすでに無条件で望むことを決めているが、この方針
を公の場で北朝鮮側に伝える初の機会となる。
先のトランプ大統領の訪日においても、総理はそれに
ついての支持を得ていることを踏まえたもの。今後、政府
は会談実現に向けた働きかけを本格化させていくことであ
ろう。
今回、総理が、日朝首脳会談に無条件で望むことを決定し
たことは、先般、日本の「拉致被害者家族会」が「親族を
返してくれるなら、その後、この問題に関して北朝鮮に
一切問うことはない」という意思決定とも一致する。
また、中国政府の高官も、無条件での日朝首脳会談の実現
に積極的に協力する意向を示している。(5月8日)
筆者もかねてから、北朝鮮は「米朝関係」を改善するさい、
日本と外交を結び、日本を足がかりにして米朝関係を
改善した方がよいという考えを提唱してきた。
翻って日本の拉致問題の要因とその淵源を考える時、
それは遠く、複雑である。第一次大戦以前の 旧日本軍部
による「韓国併合(1910年) / 植民地時代」にまで遡る。
この時、旧日本軍部は、多くの朝鮮半島の人々を日本に
送り、日本の産業を支える労働者として強制的に働かせた。
その屈辱が今日でも、南北朝鮮の人々の心に暗い影を落と
しているのである。いわゆる今日の在日朝鮮・韓国問題が
発生した淵源である。これは不幸な「戦争の爪痕」の一つ
である。特に北朝鮮には「拉致問題」はこの時の出来事に
対する報復という感情が少なからず存在する。
今日、戦前の旧日本軍による植民地支配の時代から、
すでに 100年以上が経過した。そして時代は大きく
変化した。
この問題は日本と北朝鮮の首脳並びに指導者が直接
歩み寄り「戦後処理問題」として誠意を持って語り合い、
解決していかなければならない問題である。そして
両国の未来を見据え、過去の戦争による爪痕を未来世代
に残さないように、重々に配慮して処理・解決していか
ねばならない問題と考える。
今回、阿部総理は「戦後処理問題を含めて、すべての
問題について金正恩労働党委員長と腹を割って語り合い
たい」と発言した。会談に臨むにあたっては、特に日本
の政治家、官僚、指導者の心に、戦前の旧日本軍の政治家
や軍人にあったような、中国、韓国、朝鮮人民を蔑視する
ような見方が、仮にでもあったとしたら、それらは徹底し
て排除する必要がある。そのことこそ、日朝会談に臨む
にあたっての大前提条件である。
アジアの未来の発展と平和を磐石に築くうえでも、
今回の「日朝首脳会談」の実現を強く望む。